輻射熱(ふくしゃねつ)とは、遠赤外線などの熱線によって伝わる熱のことで、太陽や機械(焼成炉など)から放出される熱は輻射熱になります。輻射熱の特徴は熱線(電磁波)が何らかの物体に当たった際に熱が発生します。電磁波のため空気に影響されず、冷たい風が吹く屋外でも熱が直接伝わります。建物内の熱の多くがこの輻射熱の影響によるもので、夏の暑さ対策をする上で、輻射熱対策は欠かせないと言えるでしょう。
本記事では、輻射熱の仕組みや具体例とともに、輻射熱を利用した暑さ対策や寒さ対策の方法までわかりやすく紹介します。
目次
3つの熱移動と輻射熱
輻射熱を正しく理解するために、まずは「3つの熱移動」から説明させていただきます。熱の伝わりには3つの熱移動があり、建物内の熱移動の割合は以下のようになります。
- 湯たんぽ型の「伝導熱」・・・5%
- エアコン型の「対流熱」・・・20%
- 電気ストーブ型の「輻射熱」・・・75%
図の3つの熱移動の割合から建物内の熱移動の大半が輻射熱で、輻射熱をコントロールすることが建物内の熱対策で最も重要なことが分かります。
夏の暑さの原因として太陽の熱がありますが、太陽の熱は100%輻射熱になります。太陽の輻射熱は地球上の大地をはじめ、住宅・工場の屋根や外壁を温め、その周りの空気が大地・住宅・工場に触れることで熱を吸収し外気温が上昇します。建物内が熱くなる原因は太陽の輻射熱により建物の屋根や外壁が熱せられ、次に屋根や外壁から輻射熱が建物内に放出されるからです。
熱の移動原則に「熱は高い方から低い方へ移動」があります。暖められた空気は軽くなり上昇することから対流熱は上に向かって上昇しますが、輻射熱は電磁波のため360度全ての方向へ移動するので、熱せられた屋根や外壁の熱は温度の低い人体へ向けて放出されるため暑くなるのです。
輻射熱以外の伝導熱や対流熱などについては「3つの熱の種類」の記事で解説しています。合わせて読んでみてください。
身近にある輻射熱の例
輻射熱は赤外線による熱であり、太陽以外には以下のような身近なものからも発せられています。
- 薪ストーブ
- 電気ストーブ
- ヒーター
- 電子レンジ
- こたつ
輻射熱とは、風が吹いていても暖かさが伝わる電磁波による熱のことで、主に太陽やストーブから放射される熱のことです。ヒーター、電気ストーブ、電子レンジは電気で内部を熱して温める仕組みとなります。薪ストーブは、薪を燃やすことでストーブ本体を温めます。さらにストーブ本体が熱を蓄え、その熱を放出して室内を温めます。
断熱材では輻射熱は止められない
「熱を止めるもの」として断熱材がありますが、正確には「熱の伝わりを遅くするもの」になります。断熱材は空気の層を多く含んだもので、空気は熱の伝わりを遅くする働きがあります。断熱材と同じ構造のものとして布団があります。布団を太陽光に当て天日干しをすると布団は“ポッカポカ”に暖かくなります。このように断熱材は太陽の輻射熱を吸収してしまい熱を蓄えてしまうので輻射熱を止めることは出来ないのです。
断熱材と遮熱材は混同されやすいですが、明確に役割が異なります。具体的な違いについては「断熱材と遮熱材の違い」ページで解説しています。合わせて読んでみてください。
夏の暑さ対策に効果的!輻射熱をおさえる具体的な3つの対策
輻射熱を抑えるには、熱を持っている物体そのものの温度を下げる、もしくは輻射熱の影響を受けなくする必要があります。では、これらには具体的にどのような方法があるのでしょうか?本項目では、特に住宅などで輻射熱を抑える具体的な対策方法について以下の3つを紹介していきます。
- 地面に水を撒く
- 庇(ひさし)をかける
- 遮熱シートを施工する
地面・屋根に水を撒く
輻射熱を抑えるには、地面や屋根に水を撒く「打ち水」も効果的です。輻射熱の当たる箇所に水を撒くことで、地面や屋根自体の温度を下げます。地面や屋根の温度が下がるのは、水が蒸発して気化する時に地面の熱を奪っていくからです。
ただし、道路などアスファルトの上は輻射熱で暑くなりやすいため、打ち水の効果は少し限定的となります。また屋根に水を撒くには大量の水を使用するためコスト面から「井戸水」を散水しますが、井戸水は鉄分を多く含むので鋼板製の屋根は錆による被害が発生します。スレート製の屋根の場合は屋根に藻が発生し屋根材を損傷することがあります。そのため、本格的な対策は以下で紹介する2つの方法がいいでしょう。
庇(ひさし)をかける
輻射熱を抑えるには、庇(ひさし)で簡易屋根を付ける方法もオススメです。日射の当たるところに庇をつけることで輻射熱を和らげ、温度を下げる効果が見込めます。
とくに建物の南面に大きな窓がある場合は、太陽の輻射熱が当たりやすいので庇をつけるのがオススメ。しかし、庇による対策ではその箇所しか効果が見込めないため、家や工場などの建物の全体で対策をしたい場合は、次で紹介する対策方法がおすすめです。
遮熱シートを施工する
大きな工場などの建物の場合は、屋根や壁などに遮熱シートを施工するのがもっともオススメです。遮熱シートは断熱材で止められない輻射熱を大幅に反射し熱の侵入を防ぐ効果が高いです。遮熱シートに使用されるアルミ箔は遠赤外線などの電磁波を反射する効果に優れているので、屋根や壁など直接輻射熱が当たる箇所に遮熱シートを施工することで、建物の温度上昇を抑え、体感温度を下げることができます。遮熱シートは、反射率が高いものほど性能が良く、当社の遮熱シート「サーモバリア」は輻射熱を97%反射するため、非常に有効な対策手段です。
さらに、建物の温度上昇を抑えることから、結果としてクーラーの使用量を抑えることができ省エネや節電、節約にもつながります。輻射熱対策に有効な遮熱シート「サーモバリア」は無料でカットサンプルと資料請求が可能ですので、気になった方は以下よりぜひご連絡ください。
輻射熱を利用した効果的な4つの寒さ対策
暑さの原因となる輻射熱ですが、冬は逆に体の芯から温まるという特性をうまく使うと効果的です。このような性質から、輻射熱は暖房器具などに活用されています。では、輻射熱を利用した暖房器具や寒さ対策方法にはどのようなものがあるのでしょうか?本項目では、輻射熱を利用した暖房器具や寒さ対策の方法を4つ紹介します。
- こたつを使用する
- オイルヒーターを使用する
- 電気ストーブを使用する
- 遮熱シートを屋根や壁、床などに施工する
こたつを使用する
こたつはテーブル裏の電熱線が発熱し、輻射熱で足元を暖めます。とくにこたつ布団をかけている場合は、布団内の空気が暖まり、足元もぽかぽかになります。ただし暖まり方は極めて局所的であることから、部屋全体を暖めるならば対流式の暖房器具(エアコン)と併用すると良いでしょう。
オイルヒーターを使用する
オイルヒーターは電気で内部のオイルを熱し、パネルを温めることでじんわりと部屋を暖めます。オイルヒーターは窓やドア付近など、冷気の入り口に置くと効果的です。ただし、オイルヒーターは一般的に暖まるまでに時間がかかるため、すぐ暖まりたい場合には不向きです。そんな時は、早く暖まりやすい電気ストーブの方が望ましいでしょう。
電気ストーブを使用する
電気ストーブは、内部の管などを電気で高熱に温め、そこからの輻射熱で室内を温めます。オイルヒーターに比べて早く暖まるため、すぐ暖まりたい時に最適です。ただし、電気ストーブはあくまで局所暖房に向いているものであり、部屋全体を暖める効果は期待できません。室内全体を温めたいならば、対流式の暖房器具(エアコン)を併用するのがオススメです。
遮熱シートを屋根や壁、床などに施工する
上記で紹介した暖房器具はいずれも局所向きですが確実に暖かくなります。ただし、暖めた室温は効率的に室内に留めておかないと効果を最大限発揮できません。
そのため、暖房器具と併用して、室内全体や工場全体に対して寒さ対策を取りたいのであれば遮熱シートの使用が最適です。暑さ対策でも紹介した、遮熱シートは冬時期には室内の暖房器具などから出る輻射熱を室内側へ反射する効果があるため、結果として室内の温度低下を抑える効果が見込めます。
ただし、遮熱シートは輻射熱への効果はあるものの、エアコンによる対流熱、湯たんぽ型の伝導熱にはあまり効果がありません。そのため、対流熱、伝導熱に効果のある断熱材と併用すると、より効果が期待できます。寒さ対策については、工場の寒さ対策、家の寒さ対策ごとに記事を用意していますのでこちらも合わせてご確認ください。
【まとめ】輻射熱を抑えて暑さ&寒さ対策を
輻射熱とは、熱せられた物質から放出される電磁波よる熱になります。輻射熱は空気に関係なく熱移動し、人体の表面だけでなく人体の深部を温める性質があります。暑さ対策には、室温を下げる対策だけでなく、体感温度を上昇させる原因をもつ輻射熱対策を取る必要があります。
輻射熱対策には打ち水、庇がありますが、工場や住宅全体など広範囲の対策には遮熱シートを屋根や壁に施工するのが最適です。高純度なアルミ箔を使用したものほど反射率が高いため、アルミ純度99%以上のサーモバリアなどの製品がおすすめです。
ただし遮熱シートは輻射熱への効果はありますが、エアコンによる対流熱、湯たんぽ型の伝導熱には効果が期待できません。そこで対流熱、伝導熱に効果のある断熱材と併用することで、さらなる効果が見込めるようになります。遮熱シート、断熱材を効果的に活用し、夏の暑さ対策や冬場の寒さ対策に役立ててみてください。
輻射熱を防ぐには遮熱シートが非常に効果的ですが、事前にメリットデメリットを知っておくのがおすすめです。具体的なデメリットは以下より是非チェクしてみてください。